センター本試験 2016解答と解説


1 政治・経済総合問題

1  正解は1

1 国立マンション訴訟判決で,景観利益」が法律上の利益として認められた。

2 住民基本台帳ネットワークに関しては,最高裁判所は憲法で保障されているプライバシー権の侵害には該当しないとしている。

3 石に泳ぐ魚』事件などで差し止めが認められている。
4 15 歳未満も含め,自己の意思を表明しているときに加え,自己の意思が不明な場合でも家族の了解があった場合は移植手術が可能となる。

 

2 正解は3
3 Small Office Home Office = SOHO の定義として選択肢文は妥当である。通信技術の発達などにより可能となっており,より多様な労働形態が確保されることが期待されている。

1 労働者派遣法,対象業務を広げる方向での改正が行われてきた。2012 年施行の改正は,日雇いなどの短期派遣の禁止は行っているが対象業務を限定するものではない。

2 ワークシェアリング,勤務時間を少なくする代わりに雇用を増やそうとする方策である。 4 男性労働者と女性労働者で区別はされていない。

 

3 正解は2

2 財政投融資は政府系列の機関が債券を発行するなどして調達した資金を,政府系金融機関などに供給し,政府系金融機関などがインフラ整備など広範な目的に用いると いうものである。かつては「第二の予算」と呼ばれるほどの規模であったが,その運用の透明性などが問題とされた。現在は一般会計予算の 1/7 程度の規模となっている。

1 予算は内閣が国会に提出する。

3 国債費の減少ではなく増加により,財政の弾力的な運用が困難になるという財政の硬直化が発生する。

4 特例国債(赤字国債)は財政法で禁止されている。財政法で認められているのは建設国債のみである。

 

4 正解は4 寡占市場においては,広告宣伝やモデルチェンジなどの非価格競争が活発となる。よって誤り。他の選択肢の記述は政府の役割と市場の限界の説明として妥当である。

 

5 正解は1

1 独占禁止法で規制されているカルテルとは,同一産業部門の企業が生産量や価格などで協定を結ぶことである。

2 ペイオフは保護額の上限を設ける制度である。

3 中小企業基本法,1999 年に大幅改正があったがなお存続している。

4 2004 年に消費者保護基本法から消費者基本法に改正された。

 

6 正解は3
3→ 40 歳代以上の当該 2 項目を見ていくと,選択肢文の記述のようになっており,正解となる。
1 「高齢社会対策」のほうが高くなっている。

2 「雇用・労働問題への対応」は,例えば 30 歳代と 60 歳代を比較すると明確に後者が低くなっており当てはまらない。

4 「高齢社会対策」は年齢階層が下がるに従って低くなっている。

 

7 正解は2
2 →2008 年の最高裁判所の判決に基づき国籍法改正がなされ,選択肢文のような区別が廃止された。
1 らい予防法は 1996 年に廃止されたので,2000 年代の......判決を受けて」が誤り。

3 現在の男女雇用機会均等法では,採用・解雇,定年について差別禁止となっている。当初は努力義務であったが,1999 年に改正された。
4 1976 年と 1985 年に最高裁の違憲判決が衆議院総選挙に対して出ている。

 

8 正解は1

1 ロールズ,『正義論』で基本的自由が全員に保障されることと,恵まれない人々の状況改善を保障することでのみ格差を許容するという原理を発表した。

2 「社会参加(アンガジュマン)」を主張したのはサルトルである。

3 「最大多数の最大幸福」を説いたのはベンサムである。

4 潜在能力が確保される平等を福祉の目指すべき方向性としたのはアマルティア・セ である。

 

2 現代社会分野

1 正解は4

4 フロムはファシズムの発展がなされた経緯を分析し,その背景としての自由に耐えられない人々を『自由からの逃走』で論じた。
1 「一億総中流」は 1970 年代頃の日本人の社会意識とされる。

2 大衆民主主義社会では,マスメディアの影響力は増大するとされる。

3 『孤独な群衆』を著したのはリースマンである。

 

2 正解は2
2 消費者庁の説明として適当である。2009 年に内閣府の外局として設立された。

1 金融再生法とは,金融機関の破たんへの対処などの目的で作成された法律である。

3 消費生活協同組合(生協)は一般市民が出資金を出し合うなどして各種事業を協同運営している協同組合である。

4 国民生活センターは独立行政法人であり,各都道府県などが設置している消費生活センターと共同で消費者の相談内容などに対応する。

 

3 正解は1 燃料電池は,水素と酸素の化学反応によって電力を発生させるものである。水素と二酸化炭素の部分が誤りで,この設問の正解となる。他の選択肢は現代の科学技術に 関する記述として正しい。

 

4 正解は3 「現代社会」特有の課題追究に関する設問である。文献にない情報に関してはインタビューなどによる対面での取材が重要となる。よって誤りであり,この設問の正解と なる。その他の選択肢の記述は正しい。

 

5 正解は1

1 障壁には物理上だけでなく,制度上,文化情報面,意識上のバリアがあるとされ, それを除去する取り組みが行われている。一例としては,点字ブロック上に物を置く ことは,無関心という意識上のバリアに基づく行為であり,それをなくすための発信 がなされている。

2 トラブルの法的解決に関する情報やサービスの提供を目指して設立されたのは法テラスである。

3 ワーク・ライフ・バランスを「インターンシップ」にすれば適当な文章である。

4 医師が十分に説明したうえで患者の理解を得るのがインフォームド・コンセント 趣旨である。

 

3 環境問題

1 正解は1

1 リサイクルや廃棄物としての処理などにおいて製造者の責任を一定レベルで明確化するのが,循環型社会形成推進基本法の趣旨の一つである。

2 循環型社会形成推進基本法では,3R のうちで廃棄物を減らすリデュースが最優先とされている。

3 ダイオキシン類対策特別措置法が存在する。

4 典型7公害に一般廃棄物の投棄は含まれない。

2 正解は2 事務監査請求は首長ではなく監査委員に対して行い,監査委員が結果を議会や首長に報告する。よって誤りであり,この設問の正解となる。その他の選択肢の記述は正 しい。

 

3 正解は4

4 水質汚濁防止法に総量規制の考えが導入されるなど,濃度規制から総量規制への転換がなされた。
1 湿地保全に関する条約はラムサール条約である。

2 日本では現在無過失責任制度が確立され,故意か否かを問わず責任を問われる。

3 持続可能な開発 1992 年の国連環境開発会議でうたわれた。人間環境宣言は 1972 年。

 

4 正解は2

2 市場を経由せずに他の経済主体から与えられる不利益を「外部不経済」という。2は典型的な例である。

1 これは市場を経由しない利益が与えられる外部経済に該当する。

3 こちらも外部経済といいうる。

4 市場価格の変動による不利益なので,外部不経済には該当しない。

5 正解は3
3 選挙の基本原則の一つである「秘密選挙」である。憲法 15 条で保障されている。 1 公職選挙法により選挙運動期間中の戸別訪問は禁止されている。 2 連座制により当選無効となる。 4 直接選挙ではなく,普通選挙についての内容となっている。

 

6 正解は2
2 公害健康被害補償法は 1973 年に制定された法律で,汚染者負担の原則 (PPP) が定められている。
1 容器包装リサイクル法は 1995 年制定であるため,高度経済成長期ではない。

3 地球温暖化対策税は別名「炭素税」といわれ,化石燃料を使用した場合の二酸化炭素の量に応じた課税を行う制度である。再生可能エネルギーについては該当しない。

4 環境基本計画は環境基本法に基づき策定されている。

 

7 正解は3

3 地方分権を促進するための三位一体改革には,地方財政の自立化を目指すための選択肢文に記述された施策が含まれている。

1 所得税・法人税・贈与税は国税である。

2 消費税は逆進性が問題となっている。消費税は各人均一に課税するため,所得の低い人ほど税負担の割合が高くなることを示している。

4 国の新規課税には関係法の制定が要求されるため,法律によらない新規課税は不可能である(租税法律主義)

 

8 正解は1

1 シャッター通り商店街は全国各地で発生し,問題となっている。

2 耕作放棄地は近年増加傾向にある。

3 ナショナルトラスト運動は市民などのボランティアや資金提供によって成り立っている。 

4 農業への企業参入は現在認められている。

 

4 経済分野

1 正解は3
3 1974 年に実質 GDP がマイナス成長となった。石油危機の後に不況+インフレが進んだことによる。

1 ドッジ・ラインはそれまでのインフレ傾向を緊縮財政により収束させたが,不況を招いた。

2 プラザ合意後円高傾向となり,輸出が苦戦することとなった。

4 バブル抑制のため金融引き締め策を採ったことによりバブルが崩壊した。

 

2 正解は2

2 キチンの波は企業の在庫投資の循環によるものとされ,3~4年の周期をもつ。

1 フィスカル・ポリシーは裁量的財政政策であり,自動的に達成されるものではない。

2 スタグフレーションは不況下にもかかわらず物価が上昇していく現象である。

4 技術革新はコンドラチェフの波の要因である。

 

3 正解は1
1 日本では 1990 年代後半から,金融機関を支えるための公的資金注入がされてきた。

2 ユーロはリスボン条約発効前から導入されている。

3 一定比率以下ではなく,一定比率(通常8%)以上を求められている。
4 1990 年代まで行われた,旧大蔵省が金融機関をすべて保護する姿勢が護送船団方式である。

 

4 正解は4

4 ストックは一定時点での経済的な蓄積の残高を示し,国富がその例。一定期間内の経済活動の量をフローといい,GDP がその例である。 

1 実質経済成長率は物価の変動を考慮して示す指標である。
2 NNP ,国民総生産から固定資本減耗分を引いた値である。選択肢文の内容は国民純福祉(NNW)と言われる。
3 GDP はすでに海外からの純所得を含んでいない指数である。

 

5 正解は3 一定レベルの知識があった受験生もいたかもしれないが,この設問は設定条件を基にグラフを読み解く能力が求められていた。 まず文章より,中国はABと定められる。次に文章を基にグラフを読めば, 2009 年で前年比マイナスとなっているのがACであるため,ロシアおよびブラジルがどちらかに入ると決められる。さらに文章で,レアル高での成長率を名目 GDP として,為替変動を GDP デフレーターであると応用して計算すれば,100×1.06/1.17 0.906 となり,2012 年が前年からマイナスになっていることが分かる(また,大雑 把に以下のように考えてもよい。文章の記述から,2011 年から 2012 年にかけてレ アル安ドル高が進んだことが分かる。レアル安ドル高が進むと,レアルをドルに換え たときに得られるドルの量は減る。また,文章の記述からは,2011 年から 2012 にかけてのレアル建てでの GDP の上昇率が同時期のレアル安の進行の割合を下回って いることも分かる。これらのことを合わせて考えると,2011 年と 2012 年のブラジル GDP を比べるとドル換算では 2012 年の方が低くなる。)ACのうち,2012 年に マイナスになっているのはCである。よってA=ロシア,B=中国,C=ブラジルであり,3が正解となる。

 

5 青年期

1 正解は4
4 レヴィンの「マージナル・マン」の定義として適当である。

1 第二次性徴についての記述である。

2 ハヴィガースト,青年期の前ではなく,青年期の発達課題として職業の選択とそのための準備を挙げている。

3 青年期は時代や文化によって時期の設定が異なる。

 

2 正解は3
3 1997 年のアジア通貨危機などを見ても分かるように,ヘッジファンドなどによる資本移動に伴って発生する通貨交換の激化が為替相場に影響を与える。

1 G 20 金融サミットはリーマン・ショックの後に開催された。

2 このような貿易形態は垂直貿易と呼ぶ。

4 この場合自国の貿易収支は赤字になる。

 

3 正解は6 A 成人式などの儀式を経て成人とする場合,その儀式を「イニシエーション」と呼ぶ。 BC エリクソンは青年期の課題としてアンデンティティ確立を挙げ,それがなされない状態として「アイデンティティ拡散」があるとした。

4 正解は4
4 後期高齢者医療制度では 75 歳以上の高齢者に対して原則1割の負担を求めている。

1 積立方式では積立金の価値がインフレーションにより下落するリスクをはらんでいる。
2 401 kなどと呼ばれる確定拠出年金はすでに導入されている。

3 公衆衛生は原則租税で賄われる。

 

5 正解は3 コール市場は金融機関同士の短期資金調達市場であり,「金融機関以外の法人企業」 は誤りである。よってこの設問の正解となる。その他の選択肢の記述は正しい。

 

6 国際社会

1 正解は4

4 条約が明示のものであるのに対し,慣行が暗黙の了解となった慣習国際法も現在なお機能しているものがある。

1 『戦争と平和の法』を著したのはグロティウスである。
2 条約締結は憲法 73 条により内閣の職務とされている。
3 植民地独立付与宣言 1960 年の国連総会で採択された宣言である。同年はアフリカで多くの独立国が誕生し,「アフリカの年」と呼ばれている。

 

2 正解は2
2 2003 年から激化しているダルフール紛争,特にアラブ系による非アラブ系の虐殺などが問題視されている。

1 クルド人による国家は成立しておらず,国連加盟などもなされていない。

3 ウィーン宣言は 1993 年の世界人権会議において採択された。

4 ジェノサイド条約はナチスのユダヤ人虐殺などを契機として 1948 年に採択されたもので,冷戦終結後の「民族浄化」の前である。

 

3 正解は4
4 オスロ条約と呼ばれている。2008 年採択。
1 15 か国中 9 か国の賛成が必要とされる。ただし 5 大国は拒否権を持っているため,事実上 5 大国すべての賛成が条件とされる。

2 国家に軍事行動を勧告することを認める条項は存在しない。

3 1 回大会は,1955 年に広島で開催された。

 

4 正解は2

2 日本は調査捕鯨問題で訴えられる形で国際司法裁判所の当事国となったことがある。 2014 年に日本が敗訴した。

1 日本は国際刑事裁判所に加盟しており,判事も送り出している。

3 常設仲裁裁判所は現在も存在する。

4 国際海洋法裁判所が存在する。

 

5 正解は1

1 インドネシアなどと介護・看護人材の受け入れ制度を含む EPA を締結している。

2 日本は TPP に関する国内議論が定まらず,しばらく交渉参加を保留していた。

3 当該制度は現在も存続している。

4 サービス貿易に関してはウルグアイ・ラウンドで定まった。